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(^_^)
由子 その2
「ゆうちゃん」
いつからか、私は由子のことを「ゆうちゃん」と呼ぶようになった。
「ゆうちゃん、好きだよ。」
「ゆうちゃん、かわいいね。」
由子は
「ダンディー、ダンディー」
「ダンディー、好き」
「ダンディー、素敵」
と、よってくる。
毎日、由子と昼休み話をするようになってきた。
仕事中も、時々、由子と無駄話することもあった。
1、2週間に1度ぐらい、外食することもあった。
酒は飲まなかった。
妻の雅美には職場のつきあいとウソをついていた。
でも・・・妻を裏切っているつもりはなかった。
しかし、女の気持ちはわからない。
初日、ホテルに行こうと・・・びっくりするようなことを言うかと思うと
キスしているときに、股間を触られることを拒んだり
女の気持ちはわからない。。。
ほんとに、わからない。。。
私が心から由子を好きだったか?
それは違う。
やはり、昔の麻代(まよ)と比べると数段落ちる女。
でも、その頃の私には由子は心のやすらぎだった。
妻の雅美には特に悪いとも思わなかった。
雅美を裏切っている気持ちはなかった。
でも、だんだん、由子に体と心がなびいていくような気がした。
由子の仕事ぶりは、決してよくない。
悪い見方をすれば、ただ会社にいるだけの派遣社員だった。
誰か会社役員、部課長のコネで派遣社員として、うちで働いているんだろうか?
それとも、正式に面接して、働いているんだろうか?
それは今でもわからない。
そんなことは、私にはどうでもよかった。
由子のことをだんだん好きになり、うっとうしく思わなくなってきた。
由子と最初に飲みに行ったのが、10月終わりだった。
そして
12月はじめ、また、由子が
「ダンディー、居酒屋にいかない?」
と誘ってきた。
「クリスマスパーティーはダメだよ。」
「いいの。。。気にしない。。。ダンディーといるだけでいいの。。。」
そういう由子をかわいく思った。
「来週でも、今週でもいいよ。。。どうせ暇だからね。。。ゆうちゃん。」
「わーーー。。。うれしい。。。また、金曜に予約するわ。。。この前のお店でいい?」
「いいよ。ゆうちゃん。」
そして、次の週の金曜日に、ふたたび、由子と先日の居酒屋に行った。
前回より、リラックスしている。
前のように、私は大ジョッキ、由子は中ジョッキで乾杯して、飲み始めた。
由子はいつものようにおしゃべりばかり。
楽しそうに私に話しかける。
私は
「そうだね」
「いいね」
など、適当にあいづちを打ち、由子といることを楽しむ。
酒がすすみ、大ジョッキをもう一杯。酎ハイをどうだろう?3杯飲んだろうか?
私も由子に話かけるようになった。
大きな声で盛り上がってきた。
何を話した?
そんなの覚えていない。
学生時代のドンチャン騒ぎのように、なんだか楽しくなった。
だんだんとバカな酒飲みになり、自分の立場を忘れたのかもしれない。
好きなだけ酒を飲んでいた。
ふと頭を上げると、
由子は横を向いている。
黙っている。
怒っている。
「どうしたの? ゆうちゃん」
・・・
・・・
「野口さん、嫌い!」
「だらしないわ」
「ダンディー、嫌い」
・・・
・・・
やばい。。。
飲みすぎた。
調子に乗りすぎた。
・・・
・・・
「ゆうちゃん、怒らないで、悪かったよ。」
「しゃきんとするよ」
・・・
・・・
「ダンディー、お酒くさい」
「こんなダンディー、嫌い!」
・・・
・・・
「悪い、悪い。。。ゆうちゃん。怒らないでよ。」
・・・
・・・
まずいな。。。
どうしていいか?わからなかった。
由子は俺に惚れている。
いつの間にか、そんな傲慢な中年になり。。。
調子に乗り、酒をガブ飲みしていた。
女の修業が足りないスケベな中年になり下がっていた。。。
心の中で反省して、時間が解決してくれるのを待った。
・・・
・・・
しばらくして、まだ横を向いている由子に
「ゆうちゃん。。。まだ、怒っている?」
「ダンディー。。。ダメよ」
「わかったよ。怒らないでね。しっかりするよ。」
「だめよ。。。お酒に飲まれちゃ。。。」
「うん。。。」
私は酒をなめるようにチビリチビリと飲んだ。
由子は黙っている。
由子の顔を見ると、横は向いていない。
でも、いつもの由子と違う。
まだ、怒っているのか?
私は、由子の顔色をうかがった。
「時間が解決してくれるよ。。。」
いつもと違う。。。まだ、黙っている。
(こんな時の歌・・・ウイスキーがお好きでしょ 完全版)
「出ようか?」
私はそういうとふたりは店を出た。
気まずい気持ちで歩き、
私は由子に
「少し、休もうか?」
というと
「うん。」
と由子がいう。
前と同じ公園のベンチに座った。
この前と違い、もう虫の声は聞こえない。
寒い。。。
我慢できないほどではないが、寒い。
「ゆうちゃん、寒くない?」
「大丈夫。平気。。。」
今日は私の方から先に由子の肩を抱いた。
「ゆうちゃん、寒くない?」
「大丈夫。暖かい。。。」
「ゆうちゃん、まだ怒っている?」
「んんん」
「ゆうちゃん、酒臭い?」
「んんん」
そして、私はまた自然に由子に顔を近づけ、くちづけをした。
由子の顔を見ると、この前みたいに目がうるんでいる。
「ゆうちゃん、まだ怒っている?」
「んんん」
「ゆうちゃん、酒臭い?」
「んんん」
由子の肩を抱いたまま、由子の乳房に手を回し、上着の胸の部分に触れた。
そして、私のオスの本能は由子の胸の谷間をさぐろうとした。
由子はすばやく手を払い、
「ダメ」
と軽く言う。
私のオスの本能は、左手を由子の股間に伸ばし、由子を欲しがったが、また、由子はすばやく手を払い。
「ダメ」
と言う。
そして、私はまた由子にキスをした。
しばらく黙ったまま、由子を抱いていた。
外は寒いが、ふたりは暖かかった。
・・・
・・・
月曜、会社に行くと、いつもの由子がいた。
「ダンディー、おはよう」
と明るく話しかけてくる。
私は、少しとまどいながら、
「おはよう。ゆうちゃん。」
と由子にこたえる。
だが、私は変に卑屈に、おそるおそる、由子の顔色さぐる。
もう、怒っていないみたいだ。
いつの間にか、臆病な中年男になっている。
まだ、由子の顔色をうかがっている。
「ゆうちゃん。金曜は楽しかった?」
「うん!」
「もう怒ってない?」
「何を?」
いつものように由子は子供のような顔で答えた。
こんな時、
男は臆病になるのか?
卑屈になるのか?
私だけなのか?
それはわからない。
でも、安心した。
いつもの由子だ。
そして、いつものように毎日が過ぎて行った。
昼休みは由子が私のそばに寄ってきて、
「ダンディー。ダンディー。」
と話しかけてくる。
私は
「ゆうちゃん。ゆうちゃん」
と答える。
そして、時々、夕食をいっしょにとる。
・・・
・・・
そして・・・
クリスマス・イヴの朝
由子が、また、私に小さなプレゼントをくれた。
「はい、ダンディー。クリスマス・プレゼントよ。」
「PIERRE BALMAN のハンカチよ。」
ダサイ中年の私には、PIERRE BALMAN なんて、縁がなかった。
なんだか、もらうのがもったいないみたいで
「PIERRE BALMAN? これって、フランス?」
「うん」
「もったいない。。。。ありがとう。。。もらっていいの?」
「でも、ゆうちゃん。ゆうちゃんに何もプレゼント買ってないけど。。。」
「いいの!」
「悪いね。。。」
「いいの!」
そして、恩に着せることもなく、由子はいつものようにふるまい。
昼休みには私に話しかけてきた。
「ダンディ。ダンディー。。。」と
そして、私は
「ゆうちゃん、ゆうちゃん」と答えた。
・・・
・・・
その日、自宅に帰り、由子からもらった PIERRE BALMAN の包みをあけた。
白地に青色の模様。
妻の雅美に
「これもらったよ。箱捨てようかと思うけど。どこに捨てようかな?」
雅美は、私に向かい、冷たい目で、睨み付け、
「あんた!浮気してるでしょう!知っているのよ!」
と言った。
(続く)
PIERRE BALMANのハンカチの例
他には
https://www.google.co.jp/search?q=PIERRE+BALMAIN+%E3%83%8F%E3%83%B3%E3%82%AB%E3%83%81&biw=1563&bih=718&source=lnms&tbm=isch&sa=X&ei=tuBVVMnKJorq8gX3qoGQCQ&ved=0CAYQ_AUoAQ#imgdii=_